成田を18時45分発のJAL076便にてホノルルへ向かう。
ホノルルでハワイアン航空に乗り換え、ハワイ島のヒロ空港へ。ヒロはハワイ島の東海岸に位置する街だ。
5年前、初めてハワイ島を訪れた。コハラビーチにある「ヒルトン・ワイコロア・ビレッジ」に滞在し、二度目はオアフからハワイ島に住む友人とゴルフをするために訪れた。今回で三度目のハワイ島となる。今回は西側ではなく、東海岸にある憧れのヒロ・ダウンタウンに滞在する。

ヒロは「雨の街」と呼ばれる。年間降水量は約3,400mmに達し、西海岸のコナの約6倍。年間280日は雨が降るとも言われている。到着した時の空はどんよりと曇り、日本の梅雨空を思わせた。観光都市としては決して成功しているとは言えないが、スコールと強烈な陽射しを繰り返すこの土地では、樹木はどれも太く、力強く育っている。オールドタウンと呼ばれる街並みは、どこか懐かしく、日本人の心に寄り添うような雰囲気を漂わせている。
マウナケアの麓にヒロの街はある。標高4,205メートル、ハワイ最高峰のマウナケアは、冬には雪が積もる。「白い山」という意味を持つ名の通りだ。ヒロは1946年と1960年に大きな津波に襲われ、それ以前の賑わいは失われてしまったと聞く。その歴史にも、日本と通じるものを感じずにはいられない。
到着は午前遅く。だがこの雨の街にも、百年に一度といわれる世界的不況の波は確実に押し寄せていた。ダウンタウンのメインストリートでは、3軒に1軒が割れたショーウインドウのまま放置された空き店舗だった。そんな通りを、ハッセルブラッドとライカをぶら下げて歩く。

19号線
数少ないカフェでは問題なくWi-Fiが繋がった。少し安堵し、リモアのバッグからMacBook Airを取り出し、日本のAMEXのコンシェルジュに連絡し、4時間後のタクシーを手配する。
ビールとハンバーガーを注文し、心を落ち着かせて撮影の準備に入る。アルコールが回り、気持ちも少し華やぐ。カメラを手に、街に出た。
バニアンツリーの前に三脚を立て、ハッセルブラッド503CWにコダックのT-MAX100を詰めて丁寧にシャッターを切る。レンズはC Planar 80mm f2.8 nonT*の6枚玉。このレンズは本当にいい。
途中、突然のスコールに慌ててハッセルブラッドをバッグにしまう。

Hsselblad503CW + Planar80mm(6elements) T-MAX 100

日系人が多く、どこかアットホームな空気に包まれたヒロの街。以前からどうしても撮りたかった場所だ。
雨宿りをしながら耳を澄ますと、雨音の向こうからウクレレの音色とフラの歌声が聞こえてくる。ヒロ湾に沿って続くバニアンツリーと大きな椰子の木が並ぶ19号線を歩きながら、ひたすらシャッターを切る。
懐かしさを覚える街並みは、きっと自分たちの祖先が築いたものがたくさんある。そう思うと、不思議と心がほどけ、シャッターも自然と軽くなっていく。
この19号線で撮影したライカM9での写真は、のちに出版した写真集『SURF AND BEACH』の表紙となった。
こうしてライカとともに旅を続けられるのも、平和だからこそ。
つまり、僕の撮る写真は旅する日々が平和で安全でいられるからなんだと思う。