DIYを行う際、その行為に合った道具を選ぶことで、作業がより楽に、そして上手く進みます。例えば、魚をさばく時には専用の包丁が必要です。すべての分野において、良い道具は機能美を持ち、高価であることが多いです。また、継続的なメンテナンスも欠かせません。

カメラも同様に道具の一つです。たとえば、夕方のカーレースなど暗く速い被写体を撮影する場合、スマホやコンパクトカメラではなく、暗部に強く、高速シャッタースピードに対応できるセンサーやカメラを選ぶ必要があります。ポートレート撮影では、マゼンタの発色の良いレンズや、大きなボケを持つレンズが選ばれることが多いです。

万能ナイフは多くの用途に対応できますが、完璧にはいきません。つまり、被写体や撮影テーマに合わせたカメラを持ち出すのが理想ですが、複数のカメラを持つことは難しいため、何でもこなせるカメラを選びがちです。

この要望に応じて、メーカーは動画から静止画まで様々な機能を搭載し満漢全席のカメラとなり、結果として価格が高くなってしまっています。本来は、購入時にカスタマイズできる(自分の使わない機能は省く)のが最善ですが、現在は初心者向けにコンピューターが自動で美しい写真が撮れるように設定されている機種が多く、マニュアル設定にしようとすると多くのセッティングを外さなければならないという逆に不便な状況になっています。

現在のデジカメではRAWで撮影すれば、ホワイトバランスや露出などは後で現像時に変更できます。

その点、ピントを自分で合わせ、ISO感度、絞り、シャッタースピードを撮影時に直感的にアナログダイアルで設定できるライカM型は、現行のデジタルカメラの中で唯一無二の存在です。これだけでもライカM型を選ぶ価値がありますし、何より「銘玉」と呼ばれる優れたレンズ群も魅力です。

現在のカメラはほとんどがオートフォーカス機能を搭載し、小さな液晶画面でコントロールするか、シャッタースピードと露出補正のダイアルで操作するものが多いです。(最新のAIスマホでは、後から絞りやシャッタースピードの変更が可能ですが。)

ライカM型は動画機能がなく、マニュアルでピントを合わせなければならないため、操作に熟練していないとスマホの方がうまく撮れるかもしれません。風景撮影には適していますが、スナップ撮影にはオートフォーカス機能のあるライカQ3の方が便利と感じます。ライカQ3は動画撮影も可能で、M型よりも寄れるため、グルメ写真にも適しています。

私の撮影スタイルとしては、被写体や撮りたい場所が決まると、納得いくまでその場に通い、数時間でも粘って撮影します。

例えば、海岸の白杭でサーファーがサーフボードを持って歩いている写真では、白杭に夕陽が当たり、サーファーが通り過ぎる瞬間を待って、日が暮れるまで4時間ほど粘って撮影します。

知人の写真誌編集者がSNSのコメントで、こんな時間にサーファーがうまい具合に通り過ぎるわけがないと書かれていましたが、現場に行ってみると、白杭とは一般の海水浴者とサーファーを分けるためのものであると分かります。どのようなシチュエーションかが理解できるのではないでしょうか。

(できれば、写真メディアに関わる方は、カメラに対する深い造詣があることはもちろんですが、実際にカメラを持って写真を撮る方、または写真やアートにも造詣の深い方であって欲しいと願います。)

この撮影までの待機の時間に露出を決め、いざという時のためにピントを合わせ、日が暮れるに合わせてISO感度を何度も変更します。ISOを高くし、ピントの幅を取るために絞りを絞るなど、できるだけ失敗を避けるセッティングはあまりしません。良い写真を撮るには、タイトな設定でしか得られない一枚があると信じて取り組んでいます。

そして、操作を迷わないフィルム時代から使っているライカM型を選ぶとモチベーションが上がりアドレナリンも出るので、私は結構ライカを持ち出す機会が多いです。

というわけで、撮影する対象やシーンによって選ぶカメラ(道具)が変わります。というお話でした。