今回は最新のLeica M EV1のファーストインプレッション

2025年11月1日の発売日。
ライカ銀座店でLeica M EV1を購入後、近頃良く一緒に撮影している八重澤ひとみさんにモデルのお願いをした。
新しいLeica M EV1で夕暮れの銀座で彼女を撮影。歩行者天国の銀座はインバウンドの盛りで凄い人混みだった。

Leica M EV1にノクティルックス50mmF0.95を装着し撮影していく。
今回のEVF内臓に踏み切ったライカを試すのはこのノクティルックス50/0.95とホロゴン系の超広角レンズで使えるかどうか?が一つの指標だからだ。

ファインダーを覗き繰り返し拡大表示にしてピントを合わせる。息をつめてシャッターを切る。

彼女は現在たくさんのCMなどに出ている売れっ子俳優らしく、「こういう映像にしたい」と伝えると瞬時に役柄に入ってくれる。銀座の雑踏の中、そこだけ違うオーラをまとう彼女が静かにファインダーの中に浮かび上がる。色気のあるストーリーのある風景が回りの喧噪を打ち消していく。

しばらく撮影をしているとバックが綺麗な夕陽に包まれる。二人に思わず笑みがこぼれる。

ライカはここのところライカQ3、M11グロッシーブラック、100周年記念モデル「TOKYO JAPAN」など、話題性のあるモデルを立て続けに投入している。その流れの中で登場したのが、このLeica M EV1だ。
本機は「Mで初めてEVFを内蔵した」という一点だけでも、従来のMユーザーにとっては大きな転換点となる存在だと思う。それは筆者も同じで、購入するかはかなり悩んだ。

今回は女優・八重澤ひとみさんを被写体に、実際の撮影で感じた点を中心にレビューしていく。

■ 自分が購入前に悩んだポイント:ISOダイヤルの廃止
M EV1を検討するうえで、最初に引っかかるのがISOダイヤルが廃止された操作系だろう。
自分は、シャッタースピードと絞りを基準に露出を組み、ISOを意図的に下げることでブレや粒状感を表現として使うことも多い。そのため、ISOが軍幹部から移動したことは、撮影リズムに少なからず影響する。(もちろん他のFnボタンやサムホイールに割り当てできる)
アナログの操作性を重視する従来型Mユーザーほど、この点は事前に理解しておくべきポイントだ。

■ EVF内蔵という最大の特徴
ライカM EV1最大の特徴は、レンジファインダーを廃し、EVFを内蔵した初のMであることに尽きる。
ファインダー周りのデザインは、ライカQシリーズを思わせる構成で、視度補正も押しボタン式。
EVFの解像度は約576万ドットと高精細で、外付けのビゾフレックス2(Visoflex 2 約370万ドット)から進化を感じる。
一方、カメラの正面デザインは非常にシンプルだ。
M9まで存在していた採光窓はもちろんのこと光学ファインダー窓もEVFを押し込めるためになくなりのっぺりとした顔になり、クラシカルな「顔つき」を求めるユーザーには好みが分かれるだろう。

■ 中身はM11と同等──選択理由は「EVFを使うかどうか」
センサーや基本性能はLeica M11と同等。
つまり、M EV1を選ぶ理由は「電子ファインダーを使うかどうか」だけと言っても過言ではない。
今回の撮影では、年齢とともに視力が悪くなっていることもありSL2に付けっぱなしにしていたノクティルックス50mm F0.95の実用性をあらためて検証した。

■ 昼と夜で評価が逆転するピント体験
結論から言うと、明るい昼間では光学式レンジファインダーの方が有利だ。
二重合致のファインダーは非常に明るく、極端に薄い被写界深度でもピントの山を掴みやすい。
1mmにも満たないピント面でも、確実に合わせられる安心感がある。

一方で、夕暮れ以降や低照度環境ではEVFが圧倒的に有利となる。
EVFでフレーム内の任意の位置を拡大できるため、
暗所でも被写体の表情や瞳を確認しながらピント合わせが可能だ。
ただし、ピーキングを頼りにできるのは実質F2前後までが限界。自分は途中でうっとうしくてピーキングをオフにした。
ノクティルックスF0.95で左右の瞳を厳密に追い込む撮影は、かなり難易度が高い。

ただピーキングに関してはレンズのピント操作に合わせて移動しかなり進化を感じる。

■ EVF拡大とM的撮影作法の違い
ノクティルックス等の開放での撮影はM EV1では、拡大表示を多用しながら撮影するスタイルになる。
これは、距離計で測距してからフレーミングする従来のM的作法とは、明確に異なる。
素早く撮影できるようになるにはかなりの慣れが必要で、この時の撮影では瞬間の表情を逃してしまうことも多々あった。スナップ用途ではテンポが変わることを理解しておくべきだろう。
ただこのレンズの場合は二重合致でも時間がかかるので同じかも。

■ 広角ユーザーには大きなメリット
一方、広角レンズを多用するユーザーにとって、EVF内蔵は大きなメリットとなる。
自分は広角大好きユーザーでお気に入りの

これらのレンズを、フレームを確認しながら覗けるという点は非常に快適だ。
特に構図を厳密に追い込みたい撮影では、EVFの恩恵は大きい。
特にホロゴン15mmと16mmは装着が可能で構図を見ながらピントを合わせることが出来る。

ライカ EV1+ホロゴン16mmF8 ファインダーを覗き画角を確認しながら最短30センチでしっかりとピントが来る。

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これに味を占めて慎重にLeica-M HOLOGON15/F8を装着(自己責任でお願いします)。驚異の10センチ近い接写も構図を見ながら出来る、まさにこのレンズにとって待ちに待ったカメラとなっている。

■ 最後に
最短撮影距離が40センチのフローティングエレメント設計のズミルックス35mmF1.4などを装着し覗きながら撮影出来るのは大きい。
自分は35mmと50mmの2本を所有しているのでありがたい。
実はこのフローティングレンズのために開発されたのではないだろうか?


■ 総評:M EV1は誰のためのMか

Leica M EV1は、万人向けのMではないが、ライカユーザーにとって、M EV1は新しい選択肢として十分に成立していると思う。

とても気に入っているライカM11 TOKYO JAPANとこのライカM EV1を使いこなしながらM12を待ち望みたい。


夕暮れ時の銀座の雑踏の中、八重澤ひとみさんの、繊細な表情を捉えたとき、このカメラにライカのDNAが流れているのを確かに感じた。

次回、ライカM EV1+HOLOGON15mmF8の驚愕の作例をお届けする。

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女優:八重澤ひとみ  株式会社 アンカット
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【映画】
「海の沈黙」
「首」北野武監督
「愛唄」川村泰祐監督
「いぬやしき」佐藤信介監督

【CM】
小林製薬、マクドナルド、ロート製薬、エスビー食品
興和株式会社、ソニー銀行、M&Aキャピタルパートナーズ
東京海上日動、集英社、P&G

他TV、WEBドラマ多数

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